第3回幻燈会報告 その3 『どんぐりと山猫』のご感想頂きました。

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小川東町にお住まいの浅井実さんがミクシィを通じて、月夜の幻燈会の紹介をしてくださいました。

長い文章ですがとっても読みやすく、幻燈会のようすがよくわかるので皆さんにもお伝えさせていただきます。

浅井さんが『どんぐりと山猫』を何度も読まれたのだなぁとこの文章から感じます。賢治さんがお好きなんですね!

ご紹介していただきありがとうございました!

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コンコンコン…って優しく小さく響く、竹の音のパーカッションから幻燈が始まり、かまびすしかった子ども達の話し声もピタリと止み…

久しぶりに真っ暗な野外で大勢の子ども達と一緒にわくわく待ってました。

8日が新月でしたので、今日10日はまだ〔月齢2.7〕。

それは弾けば冷たく響き渡りそうな細い細い右弦なんです。

―それに加えて〔月没18:34〕ですから、もう、ちょうど幻燈が始まった頃に月は沈んでしまっていたのでした。

せっかく晴れたのに“月夜”ではありません。

でも幻燈にはぴったりの闇が雑木林を支配してますから、子ども達のなかから、コワいコワいって声がもれてきました。

―おかしなはがきが、ある土曜日の夕がた、一郎のうちにきました。

導入部が、鍵本景子さんの柔らかな声で語られると、僕のなかで凍っていた〈宮澤賢治〉の世界がゆったり溶け始めました。

活字でしか味わったことのなかった「どんぐりと山猫」の世界が、大きなスクリーンに映し出された不思議な陰影画とともに確かに始まりました。

ああ、これが小林敏也さんのスクラッチ技法による絵本の世界なんだ…

“めんどなさいばん”

“とびどぐもたないでください”

大好きな言葉が満載の山猫のハガキを、鍵本さんが軽やかに誘うように子ども達に語りかけます…

入野智江さんの軽妙な竹楽器のパーカッションに、植松葉子さんの印象的な笛も加わり、子どもが頁をめくるペースをおもんばかるように、ゆっくりお話は進んで行きます。

賢治の世界だけの―

すきとおった風がざあっと吹くと、栗の木はばらばらと実をおとし、

一郎が山猫のことをきくと、

「やまねこなら、けさはやく、馬車でひがしの方へ飛んで行きましたよ。」って答え、

ぴーぴー笛を吹く笛ふきの滝は西の方へ飛んで行ったってぴーぴー答えるし、

ぶなの木のしたでどってこどってこと変な楽隊をやってるたくさんの白いきのこにきけば、「南の方…」

くるみの木の梢をぴょんぴょんとんでいる栗鼠にたずねれば、

「けさまだくらいうちに馬車でみなみの方へ…」

礼を言う間もなく、りすは居なくなり、

“ただくるみのいちばん上の枝がゆれ、となりのぶなの葉がちらっとひかっただけでした。”

さらに闇が深くなって、小林敏也さんの表現する宮澤賢治の世界にずんずん引き込まれて行きます。

“にわかにぱっと明るくなって、眼がちくっと”すると

“うつくしい黄金いろの草地で、草は風にざわざわ鳴り、まわりは立派なオリーブいろのかやの木のもりでかこまれておりました。”

手に革鞭をもった奇体な馬車別当が現れると、隣の女の子の怖そうな吐息が漏れ聞こえてきました。

山猫の顔が大きく映し出されたり、鞭の音がひゅうぱちっ、ひゅうぱちっと響く度に、前に座ってる子ども達の背中が…

けれど、どんぐりたちのセリフが、三人のどんぐりんズの可愛い声で聞こえてきたので、とたんに嬉しくなったようです。お友達なのかな?

文庫本を幾度も読み込むことで自分なりの“どんぐりと山猫”の世界を作ってたので、少し小林敏也さんの表現する宮澤賢治の世界をきつく感じましたが、朗読・パーカッション・笛との交わりはすばらしいものでした。

月夜の幻燈会が終わり、拍手につつまれてあたりはにわかに賑やかになりました。

それぞれ持参した懐中電灯を頼りに、三々五々帰ってゆく家族連れは、この雑木林に馴染んで、この雑木林を大切に思ってる人々のようでした。

この雑木林の大事な住人でもあるんですね。

 

 

現在ある府中街道に併走する形で、36mもの幅の道路が小平中央公園の、この雑木林を飲み込んで縦貫するそうです。

府中街道との距離は僅か5、60m。

青梅街道との交差点でクランクしている不具合を直して、府中街道を真っ直ぐにして渋滞を無くする計画だそうです。

府中街道が2本になる?!

確かに10年位前にⅠさん家に散歩かたがた遊びに行く度に、府中街道の大渋滞に呆れて、夜中に爆弾でも仕掛けたくなったけど、砂漠や荒野に道路を造るのとは訳が違うからね。

中央線が高架になり、新小金井街道も完成して、不景気なせいもあるんだろうね、府中街道の渋滞はずいぶん無くなりました。

ウチの近くの、八坂の南にある西武線の踏切も来年には高架になり無くなりますから、渋滞は新青梅街道の北の西武新宿線の踏切を挟んだ道路だけになりそうです。

こっちの高架化の方が先だと思うけどねぇ。

青梅街道から新青梅街道の間の府中街道は拡張されて、両側に大型の量販店がたくさん出来ました。

地方でよく見かける画一的な風景です。

車で来て買物をするだけの潤いのない道路が延々と続いています。なにしろ広いからダンプや運送トラックが列を作って休んでる所すらあります。

こんな道路が更に延々と府中まで続いて、決まり文句のように経済効果が上がり生活が便利になるからって言われても、そんな喜びは…

真っ暗闇の雑木林を、懐中電灯を持参して、つまずきそうになりながら“月夜の幻燈会”に行く喜びに比べたら貧しい貧しい…

詳しくは“都道小平3・3・8号線計画を考える会”のホームページをご覧ください。

宮澤賢治の童話って、演出や効果の仕方で、時としてずいぶん違った貌を見せてくれるのでびっくりしますねぇ。

特に今回は真っ暗闇の雑木林でしたから楽しかったです

地域で頑張るお母さん方ってすんごいです。


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