小平市市民学習奨励学級 「私たちにもできる! みんなで守る雑木林の話」録画データ

大変遅くなりましたが、2016年2月13日(土)に津田公民館ホールで開催した小平市市民学習奨励学級「私たちにもできる! みんなで守る雑木林の話」(講師:堀大才先生)の録画映像をアップします。音声が聞きとりにくい箇所もありますが、どうぞご了承ください。

この日は市内のイベントがいくつも重なっていましたが、35名の参加がありました。室内での講演でしたが、実際に見て知ることを重視された講演でした。たくさんの枝を持参され、それを実際に見せながら、いきものとしての樹木の機能やしくみについて話が進められ、大変わかりやすかったです。

「木のきわめて高い公益的機能は、木の大きさと関係する。…木は大きければ大きいほどさまざまな機能が高くなる。その分、危険性も大きくなる。だから、よい状態で維持するために管理するんでしょう?」 樹木についての知識を持たず、やみくもにこわがることが、かえって樹木を危険な状態にしてしまう。しっかり知識をもって、管理する技術の必要性を感じました。

 質疑の時間には活発な質問が続き、堀先生はひとつひとつの質問にじっくり答えてくださって、大変充実した講演会になりました。「参加者の当事者意識の高さにも刺激を受けた」という感想も寄せられました。 


小平市市民学習奨励学級「私たちにもできる! みんなで守る雑木林の話」(講師:堀大才先生)※5つの映像に分かれています。

小平市市民学習奨励学級 私たちにもできる! みんなで守る雑木林の話 その1
https://youtu.be/j5u0RR15Ajc

小平市市民学習奨励学級 私たちにもできる! みんなで守る雑木林の話 その2
https://youtu.be/Ph-CcfjHTKQ

小平市市民学習奨励学級 私たちにもできる! みんなで守る雑木林の話 その3
https://youtu.be/6nGlzvpmabk

小平市市民学習奨励学級 私たちにもできる! みんなで守る雑木林の話 その4(質疑)
https://youtu.be/Sw1na4qRKqE

小平市市民学習奨励学級 私たちにもできる! みんなで守る雑木林の話 その5(質疑)
https://youtu.be/OQ64PS9BsOE


当日、会のあいさつとして述べた企画の経緯を、以下に簡単にまとめました。

小平中央公園東側のどんぐり林の東半分は道路予定地の柵に囲まれてしまっていますが、残りの西半分の管理について、小平市は、昨年3月に当面は開放するが、中長期的には開放が困難だ、樹林の安全確保や自然環境回復のために立ち入り出来なくなる可能性があると回答しています。

小平市内では、中に入ることのできる樹林は大変限られています。幻燈会や観察会をしたり、プレーパークやこだいらサーカスが開催されたり、散策したり体操したり、人が中に入って過ごすことの多い林です。小平市は、踏み固められている現状を問題視して、中長期的に開放を制限する可能性について検討していることがわかってきましたが、人にとっても土の上で過ごせる林は大切ではないでしょうか。市としては、「守る=立ち入りできない保存林」と考えているようですが、人が中に入ることができるような管理を市民が参加する形で行うことの可能性について考えたいと思っています。

昨年2月末に堀大才先生をお呼びして、樹木診断の基礎のワークショップを開催しましたが、その中で、樹林の公益性ある機能をどう保つか、できるだけ切らない管理とはどんなものかというお話を聞いて、小平市で関心を持つ多くの人たちと共有したいと考え、この講演会を小平市市民学習奨励学級の枠で企画しました。


配付資料

  • 堀大才著『絵でわかる樹木の育て方』(講談社、2015年)第九章
  • みんなのどんぐり林マップ

2月28日「みんなで樹木診断〜どんぐり林はどんな状態?」報告

2月28日(土)に樹木診断ワークショップを開催しました。講師の堀大才先生は、樹木医制度を立ち上げた方で、樹木医を教える先生です。今回は、危険度診断の基本についてうかがいました。

お聞きしたお話がとても重要な内容だったので、ちょっと長くなりますが、共有したいと思います。講義のメモのうち、危険度診断について、また、この知識を市民が持つことの意味、どんぐり林の現状について話された部分を公開します。どんぐり林がひとつ前の記事のような状況にある中で、多くの方にお読みいただきたいと思っています。

「みんなで樹木診断〜どんぐり林はどんな状態?」
日時:2015年2月28日(土)13:30-16:00
場所:小平中央公園どんぐり林(体育館の東側の林)
講師:堀 大才先生

危険度診断の重要性と市民自身が知ることの意味

危険度診断は大変重要だ。すべての木は、いつかは必ず倒れる。行政はこわがってすぐ切ってしまうが、木が倒れたり大枝が落ちたりするのは、幹に腐朽が進行して空洞化する、根が腐るか切られる、大枝が枯れるか亀裂が入るなど、さまざまな理由がある。その理由を調査して、危険性が高いか、安全かを判断するのが危険度診断だ。

危険と診断した場合でも、すぐ木を切るということにはならない。その危険性を除去すればいい。放置すると危険な枯枝があれば、その枝を切ればいい。

木全体を切ってしまうと、木が持っている環境保全機能、景観を良くする機能、林産物をもたらす機能など、様々な機能が失われてしまう。幹があるからいいということでもない。枝葉がやっていること、樹冠がやっていることがある。木の機能を最大限に保全しながら、共存をいかに果たすかが重要だ。

危険度診断はやさしい技術ではない。活力があるかないかを診断するのは簡単だが、「元気そう=安全」でも、「元気がない=安全でない」でもない。何が危険かを診断評価し、対策を考えるのが危険度診断だ。

危険を除去するのに手っ取り早い対策は木を除去することだが、それでは失われるものが多い。失うものを少なく、安全にする対策には、枯枝を剪定する、生きた大枝を剪定したくない場合は大枝同士をロープでつなぐ、伐倒したくない場合は木と木をロープでつなぐなど、様々な方法がある。

木を切るというのは、いろいろな対策を検討した後の、最後の手段だ。現代では大部分の役所は最初から切ると決めてしまっているが、「危険だから、こういうふうにしましょう」と提案できるように、市民がよく知ることが重要だ。

危険度診断は責任の重い仕事だ。「安全だ」と言って事故が起こると、裁判沙汰になることもある。行政はそれが一番怖いので、すぐ立ち入り禁止にするか切ってしまう。

森の中で快適な時間を過ごすことは、情操教育など様々な面で大切だ。森の中で活動する人は、ぜひ、こういう知識を持って欲しい。

どんぐり林の現状

現状の林は少々混んでいて、樹冠が高くなっている。木と木が近すぎる場合には細い方、負けている方を間引くなど、光の環境を整える必要がある。そうすれば、全体的に低い枝が出て活力が出る。幹が太くなり、安全になる。

このように太くなった木で萌芽更新した場合、ひこばえが出るか疑問だ。クヌギやコナラはコルクが厚い木なので、100年を超えると萌芽しない。薪炭林経営の場合は15年~25年、平均的には20年に一回切る。ここの樹木が最後に切られたのはいつか、それまでに何回切られたか、を知る必要がある。最後に薪炭経営されてから60年くらい経っている場合は、株の萌芽能力が衰えている。樹冠の位置が高くなると、低い所で切っても萌芽しにくく、萌芽更新がうまくいかない可能性がある。

健全な木と不健全な木を分けて、不健全な木を切る。上から落ちる可能性の高い枯枝をこまめに剪定する。すきすぎた所に補植するなどの対策が必要だ。

この林は相当立派だ。これだけの林は一朝一夕には作れない。かつては薪炭林だったとしても、年数がたって林の質が変わっており、現状は薪炭林経営に戻せる状態ではない。大きくなった樹林は環境保全機能も高いので、それを維持しながら、安全を確保すべく、みなさんの知恵を出して市に提案したほうがいい。

コナラやクヌギは、100年程度で枯れる木ではない。天然林なら200-300年生きる。スギ天然林には1000-2000年続いている林もある。

ここの木の活力更新をどうすればうまくいくか。薪炭経営できる状況ではないので、補植したい場合は人工的にコナラ種子を取り蒔きするといい。苗木の移植は簡単だ。切る以外にもやり方はいくらでもある。放っておいてひこばえが育つ環境ではなくなっており、人間が保護育成する必要がある。

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講師:堀 大才先生
(プロフィール)
東京農業大学非常勤講師(樹木医学、環境緑地学)
法政大学生命科学部兼任講師(植物医科学)
NPO法人樹木生態研究会代表理事
樹木医認定制度創設者
(一財)日本緑化センター樹木医研修講師
樹木医学会監事