樹木の防火機能:東京新聞朝刊

関東大震災から90年の今朝の東京新聞は、全体が樹木と火災特集のようです。大変充実した資料となっていますので、長くなりますが、ご紹介します。

1面には、関東大震災で樹木が果たした防災の役割について、貴重な証言とともにまとめられた記事が掲載されています。記事は「緑と自然の力を借りて大火を防ぐ。関東大震災の教訓を原点にしなければならない」(室崎益輝・神戸大名誉教授)という言葉で結ばれています。一部抜粋しますが、ぜひ以下より全文をお読みください。
「森」が命救ってくれた 猛火、九死に一生 関東大震災きょう90年:東京新聞2013年9月1日 (※東京新聞のサイトに飛びます)

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(以下抜粋)
森は人、人、人で一寸の余地もない。水道管が破裂し、少しの飲み水もなかった」。四方は火の海。火の粉を払い一夜を過ごしたが、公園は燃えなかった。「大木がたくさんありましたから」。葉の付いた枝を折り、亡くなった人にかぶせて回った。「せめてギンバエから守ろうとしたことを覚えております。(関東大震災のとき横浜公園に避難した109歳の女性の証言)

関東大震災の犠牲者は十万五千人に上り、中でも東京の隅田川両岸に広がった大規模火災で多くの人が焼死した。当時の火の流れを詳細に分析した「東京市火災動態地図」(震災予防調査会)によると、現在の江東区にある清澄庭園や千代田区の日比谷公園、港区の芝公園など、公園や寺社が延焼を食い止めている。そこには必ずイチョウなど防火性の高い樹木があり、避難者が生き延びた。

防災に詳しい室崎益輝(よしてる)・神戸大名誉教授は「街をコンクリートで固めるわけにいかない。燃えにくく水分の多い樹木を選び、緑を増やすことが都市防災には重要」と断言。公園や街路樹、生け垣が延焼速度を落とし、燃えにくい街づくりに有効と訴える。

<樹木の防火機能> まず「水分による延焼防止」。生葉は重量の数十%が水分で枝も水を含み、水蒸気として放出され温度上昇を妨げる。葉が厚いほど水分が多く防火力は大きい。次に「熱や煙の遮断と拡散」。適度に密生した樹木は周囲の熱風を遮り、遠赤外線の「ふく射熱」の進入を防いで熱気流や煙を上にそらす。最後に「火の粉の捕捉」。風で火の粉が飛ぶと新たな火災を生むが、枝葉は飛散を防ぎ消火する。効果は種類で異なるが一般に常緑樹は防火力が高く、中でも広葉樹は有効。

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特集面:緑の壁 生かせ

関東大震災後の山林局(現森林局)の研究を元に当時の状況を検証した研究が紹介されています。「関東大震災の例から、防火には豊富な常緑樹があり、高木と低木の各階層がバランスよく発達しているという『緑の量と質』が大切だということがよく分かる。現在の避難場所の緑地のあり方を考える教訓にするべきだ」(福嶋司・東京農工大名誉教授)この特集面では樹木の延焼防止効果についての実験結果や、樹木の種類による防火力の違いも紹介されています。

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社会面:遠い 狭い 緑不足 23区 広域避難場所に課題 3キロ超、1人1平方メートル未満も

「『阪神』でも緑が防火」という記事もあり、樹木の防火力について書かれています。「水分を含む樹木がまさに『水の防火壁』となった。公園のオープンスペースで延焼を食い止めた」(佐々木葉二教授・京都造形芸術大)ここで参照されている日本造園学会の報告書は、おそらく『公園緑地等に関する阪神大震災緊急調査報告書』(社団法人日本造園学会阪神大震災調査特別委員会)ですね。

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