2月28日「みんなで樹木診断〜どんぐり林はどんな状態?」報告

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2月28日(土)に樹木診断ワークショップを開催しました。講師の堀大才先生は、樹木医制度を立ち上げた方で、樹木医を教える先生です。今回は、危険度診断の基本についてうかがいました。

お聞きしたお話がとても重要な内容だったので、ちょっと長くなりますが、共有したいと思います。講義のメモのうち、危険度診断について、また、この知識を市民が持つことの意味、どんぐり林の現状について話された部分を公開します。どんぐり林がひとつ前の記事のような状況にある中で、多くの方にお読みいただきたいと思っています。

「みんなで樹木診断〜どんぐり林はどんな状態?」
日時:2015年2月28日(土)13:30-16:00
場所:小平中央公園どんぐり林(体育館の東側の林)
講師:堀 大才先生

危険度診断の重要性と市民自身が知ることの意味

危険度診断は大変重要だ。すべての木は、いつかは必ず倒れる。行政はこわがってすぐ切ってしまうが、木が倒れたり大枝が落ちたりするのは、幹に腐朽が進行して空洞化する、根が腐るか切られる、大枝が枯れるか亀裂が入るなど、さまざまな理由がある。その理由を調査して、危険性が高いか、安全かを判断するのが危険度診断だ。

危険と診断した場合でも、すぐ木を切るということにはならない。その危険性を除去すればいい。放置すると危険な枯枝があれば、その枝を切ればいい。

木全体を切ってしまうと、木が持っている環境保全機能、景観を良くする機能、林産物をもたらす機能など、様々な機能が失われてしまう。幹があるからいいということでもない。枝葉がやっていること、樹冠がやっていることがある。木の機能を最大限に保全しながら、共存をいかに果たすかが重要だ。

危険度診断はやさしい技術ではない。活力があるかないかを診断するのは簡単だが、「元気そう=安全」でも、「元気がない=安全でない」でもない。何が危険かを診断評価し、対策を考えるのが危険度診断だ。

危険を除去するのに手っ取り早い対策は木を除去することだが、それでは失われるものが多い。失うものを少なく、安全にする対策には、枯枝を剪定する、生きた大枝を剪定したくない場合は大枝同士をロープでつなぐ、伐倒したくない場合は木と木をロープでつなぐなど、様々な方法がある。

木を切るというのは、いろいろな対策を検討した後の、最後の手段だ。現代では大部分の役所は最初から切ると決めてしまっているが、「危険だから、こういうふうにしましょう」と提案できるように、市民がよく知ることが重要だ。

危険度診断は責任の重い仕事だ。「安全だ」と言って事故が起こると、裁判沙汰になることもある。行政はそれが一番怖いので、すぐ立ち入り禁止にするか切ってしまう。

森の中で快適な時間を過ごすことは、情操教育など様々な面で大切だ。森の中で活動する人は、ぜひ、こういう知識を持って欲しい。

どんぐり林の現状

現状の林は少々混んでいて、樹冠が高くなっている。木と木が近すぎる場合には細い方、負けている方を間引くなど、光の環境を整える必要がある。そうすれば、全体的に低い枝が出て活力が出る。幹が太くなり、安全になる。

このように太くなった木で萌芽更新した場合、ひこばえが出るか疑問だ。クヌギやコナラはコルクが厚い木なので、100年を超えると萌芽しない。薪炭林経営の場合は15年~25年、平均的には20年に一回切る。ここの樹木が最後に切られたのはいつか、それまでに何回切られたか、を知る必要がある。最後に薪炭経営されてから60年くらい経っている場合は、株の萌芽能力が衰えている。樹冠の位置が高くなると、低い所で切っても萌芽しにくく、萌芽更新がうまくいかない可能性がある。

健全な木と不健全な木を分けて、不健全な木を切る。上から落ちる可能性の高い枯枝をこまめに剪定する。すきすぎた所に補植するなどの対策が必要だ。

この林は相当立派だ。これだけの林は一朝一夕には作れない。かつては薪炭林だったとしても、年数がたって林の質が変わっており、現状は薪炭林経営に戻せる状態ではない。大きくなった樹林は環境保全機能も高いので、それを維持しながら、安全を確保すべく、みなさんの知恵を出して市に提案したほうがいい。

コナラやクヌギは、100年程度で枯れる木ではない。天然林なら200-300年生きる。スギ天然林には1000-2000年続いている林もある。

ここの木の活力更新をどうすればうまくいくか。薪炭経営できる状況ではないので、補植したい場合は人工的にコナラ種子を取り蒔きするといい。苗木の移植は簡単だ。切る以外にもやり方はいくらでもある。放っておいてひこばえが育つ環境ではなくなっており、人間が保護育成する必要がある。

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講師:堀 大才先生
(プロフィール)
東京農業大学非常勤講師(樹木医学、環境緑地学)
法政大学生命科学部兼任講師(植物医科学)
NPO法人樹木生態研究会代表理事
樹木医認定制度創設者
(一財)日本緑化センター樹木医研修講師
樹木医学会監事


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